ほのぼのプチ童話集 かわいい主人公たちの短い童話集です。ご家族でどうぞ!

第二話「ネモフィラの青い瞳」

童話館「ネモフィラの青い瞳」

小さな可愛いネモフィラが、広いお空に向かってお話しています。
「ねェ、大きな大きな青い空さん。私は小さいけど、あなたと同じ色をしてるでしょ? 私ネモフィラって言うの。英名では、ベイビー・ブルー・アイズって呼ばれているんだけど・・・どうかしら? 私、赤ちゃんの青い瞳にそっくりでしょ! でも、私はじゅうぶんに成長した大人なのよ。」
お空は何にも答えません。でも、ネモフィラは続けます。
「私、あなたと同じ色なのはなぜかって、知ってるかしら? 私はあなたを映し出しているの。実は私、人間の心も映し出しちゃうのよ。驚くでしょ!」 と、自慢をはじめます。

お空はやっぱり何にも答えてくれません。ネモフィラはまた話します。
「私をみつめる人間が悲しい顔をしていると、私も悲しくなっちゃって、同じブルーになるの。でも、人間が明るく朗らかな眼で見つめる時は、私も嬉しくなっちゃって、晴れ々としたスカイブルーで輝くの。私のこと、嫌いだって見る人には、私もイヤだなあ~と、思うから汚く映っちゃう。人間の心がわかっちゃうのって、ちょっと辛いわ。でも、大人ってこうなのよね」
と、またまた自慢します。何でも知ってる大人のつもりなのでした。

それでも、お空は、黙ったままです。たくさんの小花をつけたネモフィラのおしゃべりが続きます。
「大きな空さん、なぜ答えてくれないの。こうして、あなたの色と心を映し出してあげてるのに・・。そうそう、人間も何も言ってくれないわ。ただ皆で『かわいい~! 』って言うだけ。私が折角、その人間の心に応じて映し出してあげてるのに。だから時々、さみしくなるの。どうしてかしら? 教えて! 大きな青空さん。」
 すると、それまで黙っていたお空が、急に鋭い光と共にゴロゴロッ!と、すさまじい音で話し出しました。春雷(しゅんらい)です。

「ネモフィラさん! きみは自分を知ってるのかい? 自分を知らなきゃ他の人の心なんかは、知りっこないんだよ。他のものに流されない自分をつくりなさい。そして、自分を知り自分の心を守りなさい! それがほんとうの大人というものさ」
と、言いつつまたもやピカーッ!と輝きます。

 ネモフィラはその激しさに感動しました。それで、すぐに
「そうです! 私は自分を失って流されてばかりいました。ありがとう! 大きな空さん。これからは、もっともっと大人になって自分を知り、自分の心で決めた通りのことを相手に示すことにするわ!」
一瞬にして、既に大人になった気分のネモフィラが決意をこだまさせました。

その時、お空は突然暗くなり・・・にわか雨が大きな涙のようにバラバラッ!と降り出します。
途端に、ネモフィラは青い涙のようにポロポロ!と、お花の顔がこぼれ落ちていきます。自分の決意を忘れてしまったのでした。
 やっぱり、ネモフィラはいつまでも可愛い『青い瞳をした赤ちゃん』だったのでした。
雨の日にも、すぐに自分を失って流されるので・・・要注意のネモフィラさんでしたとさ。

(by 徳川悠未)